◆百歳は折り返し点、目標は二百歳 80歳くらいのとき、 生活保護を受けるようになって、 文字通り細々といった感じの生活が始まった。 そうなると、 なにも面白くない。 で、90歳になったころ、 毎日のように、今年死ぬか、来年死ぬか、 そればかし考えてましたよ。 すると本当に元気がなくなっちまうんです。 あるとき、 ここがポイントだなって気づいたの。 つまり、人間て奴ア、 絶えず何かに挑戦してなきゃダメなんですねえ。 ひらたくいア、欲をかくってことです。 そいで、あたしゃ目標を2百歳において、 目いっぱい欲張って見たんです。 だから、今が折り返し点。 ◆生き残れるコツ(長生きのコツ) 神経の細かい人は、 自爆するんですね。 また、あまり太すぎると、 世渡りに失敗する。 ま、中間の神経でいながら、 目標を何かにおいて 「こいつをものにしよう」 「こつを乗り越えてやろう」 「いっちょうやってみよう」 って人が生き残れるんです。 言い換えれば、 早く楽をしたいっていう、 いやしい根性が老いや死を運んでくるんでしょうね。 人間は誰だって、 苦より楽がいいに決まってますよ。 けどね、 はっきりと目標を持てば、 そんなことはいってられない。 ◆競馬歴50年 「競馬をしている人は、 あたしを含めてみな負けたという者ばかしですが、 儲けたって人は実際にいるんですかねえ」。 すると菊池さんは、 しばらく考えてから、 「うん、一人だけいるよ。 鈴木一平クンだ」 「何者ですか、その人は?」 「神田で出版をしている男だが、 損をしたのは見たことないねえ」 で、わけを訊いたら・・・ 「鈴木クンはね、 1日に1レース、 これだと思った馬券しか買わないのさ。 しかもね、 馬場に行っても閃かなけりゃ、 なにも買わない。 つまり、馬券ってやつは、 買えば買うほど損をするしくみになってんだよ。 だから、 買わない奴がいちばん儲けてるってわけさ」 ◆人生、丁半勝負 江州ごうしゅうの近江おうみ、 つまり今の滋賀県、 あそこは商人の国で、 バクチをする奴ァ人間のクズという思想が古くからある。 だから、 株に手を出しても危険だといって、 その男には家督を継がせない。 言ってみりゃ、 石橋を叩いて式の人間じゃないと信用されない。 ところが、遠州えんしゅう、今の静岡県の掛川あたりでは、 娘を嫁にやるとき、相手に必ず、 「バクチは打つかい」って訊く。 で、仲人口なんかが、 「真面目な男で、 バクチなんてやりません」 なんていおうもんなら、 「この話はお断りだね。 バクチも打てないような奴ァ、 一生下積みで終わるに違いないね。 そんな男のとこへ娘をやるわけにはいかないよ」 ってたちまち破談になる。 どっちがいいか決めるわけにゃいいかないが、 令和の現代でも、 近江より掛川の気性を買ったほうが よいのかも知れない。