◆貧しい者がより貧しい者を搾取する生活保護 日本国は現在、 公園や河原で暮らす日本国民を 劣悪な生活環境の中に放置している。 済む家もなく、 残飯を漁る以外にほぼ生きる術を持たない彼らは 紛れもなく日本社会の最貧困層であるが、 国家が保護の手を差し伸べることはない。 なぜか? 生活保護は自治体が支給するものであり、 申請の要件として住民登録が必要とされているからだ。 住所を持たないホームレスは 行政上「存在しない人々」であり、 保護の対象にはならない。 だが、これは欺瞞ではないだろうか? ホームレスに対して「自己責任」を問う人がいる。 彼らは望んで社会からドロップアウトしたのだから、 国家が保護を与えるのは 彼らの意思に反することになる。 生活保護が必要なら、 いつでも公的機関に援助を求めればいい。 だがこの主張は、事実においても、 論理においても間違っている。 精神科医は、ホームレスの多くが 精神障害者であると推定している。 貧困の原因が心の病にあるのなら、 「自己責任」を問うことはできない。 行政がこの事実から目をそむけるのは、 生活保護や医療援助を与えない 「正当な」理由を失いたくないからだ。 何人も社会生活を放棄する自由や、 国家からの保護を拒否する権利を有している。 その意思を尊重しなければならないのは当然だが、 だからといって「自分は貧しい」と自己主張する 人だけを援助すればいいということにはならない。 社会保障は心理的・主観的な要素ではなく、 外形的・客観的な基準で分配されるべきだ。 そうでなければ、行政の複雑なルールを理解し、 それに則って「貧しさ」を証明する能力を持つ 「弱者」だけが救済されることになる。 国家が個人に直接、現金を供与する形態の社会保障は、 どの先進国でも機能しなくなってきている。 ひとたび生活保護を受け取れば、 その収入に依存し、労働意欲を失ってしまう。 時給1000円で1日8時間働いて月10万円稼ぐより、 何もせずに月額10万円の保護を得られるなら、 その方がいいに決まっている。 それを精神論で叱咤激励しても意味がない。 貧しい者がより貧しい者から搾取する制度は、 社会の歪みを拡大する。 それは共同体のモラルを融解させ、 破綻と混乱へと至るだろう。