◆年金【2】 国民年金の空洞化が問題になっている。 年金加入者の4割ちかく、 約900万人が保険料を納めていない。 この人たちはなぜ、 国民の義務を怠っているのだろうか? このうち500万人は保険料免除者だから 経済的な理由だとわかる。 それ以外に保険料の請求を無視している未納者が 300万人弱おり、 残る100万人はそもそも年金制度に加入していない。 厚労省によれば、 約400万人の未納者・未加入者の半数が 民間の生命保険や個人年金に加入しているという。 日本国には国営保険会社より一民間企業を信頼する人が 200万人も存在することになる。 未納者・未加入者が増えるのは、 支払った保険料より年金の受給額が少なく、 払い損になるからだと言われている。 確かにサラリーマンの加入する厚生年金の場合、 40歳以下の加入者は平均寿命まで生きても 払った分を取り戻せない。 厚生年金が割に合わない理由の一つは、 所得のない配偶者(専業主婦)の保険料を タダにしているからだ。 これでは独身や共働きのサラリーマンは、 同僚の奥さんの保険料まで負担することになる。 もう一つの理由は、 基礎年金の赤字の補填に 厚生年金の保険料が流用されているからだ。 国民年金の赤字が拡大すると、 厚生年金の報酬比例部分が減額される。 未納者・未加入者の負担分を、 サラリーマンが肩代わりしているのだ。 年金制度の矛盾は厚生年金に集中している。 火事はここで起きている。 だが住民であるサラリーマンは 給料から問答無用で保険料を天引きされているため、 避難することすらできない。 対して自営業者などが加入する国民年金は、 加入者自身が保険料を納付する。 所得にかかわらず保険料は定額で、 65歳から一定(約6万5千円)の年金を受取る。 定年直前まで受給額がわからない厚生年金と比べて、 こちらははるかに明朗会計だ。 国民年金の場合、 将来の保険料引き上げを考慮しても、 支払った額以上の年金が戻ってくる可能性が高い。 そのうえ保険料は全額、所得から控除され、 受給時にも公的年金控除の適用が受けられる。 いずれも民間の保険会社では ありえない大判振る舞いだ。 国民年金の保険料を支払うのは、 経済的にはかなり合理的な選択なのだ。 対岸の厚生年金で火の手が上がるのを見て、 国民年金加入者は続々と逃げだしていく。 これはかなり皮肉な光景ではないだろうか。