◆人生を豊かに生きるのにカネはさほど重要ではない。 なければ困るが、 所有するカネの量に比例して 幸福が増大するわけではないからだ。 1億円のカネが2億円に増えたとしても、 人生が2倍幸福になることはない。 ヒトは一匹の動物として生まれ、 成長し、老い、死んでいく。 経済的に言うならば、 生きるということは、 与えられた有限の時間の中で 自らの人的資本を最大限に活かし、 より多くの効用を獲得することだ。 カネはそのための手段であり、 それ以上のものではない。 私たちが生きる自由な社会では、 それが法に反しない限り、 どのような夢を抱くことも認められている。 その夢を実現するために 一定量のカネが必要なら、 短期間に効率的に獲得することで 人生の可能性は広がるだろう。 だが、カネそれ自体は何も生み出すことはない。 たとえ億万長者になったとしても、 失われた時間を取り戻すことはできない。 いたずらにカネを増やし、 老いて死んでいくだけの人生は幸福だろうか? 生きる目的は 他者の承認を得ることにあるという考え方もある。 カネは、名誉や尊敬や愛情から見放された 人間に与えられる代償でもある。 すべての幸福をカネで贖あがなうことはできない。 これは紛れもない真実だ。 だからこそ、 無駄なことに貴重な時間を費やしている余裕はない。 経済合理的に生きる意味はここにある。