ニーチェは、 「清貧」を善良さの表れとして肯定した キリスト教の価値観を、 「奴隷の道徳」として批判。 貧しさを「よい」、 富むことが「悪い」とする考え方は、 弱者の「ルサンチマン」(怨恨)に 過ぎないものとした。 たしかに歴史的に見ても、 人間的な文化・文明は、 貧しさの中には育たない。 社会に一定の富の余裕があって 初めて文明が生まれる。 そういった意味でも、 お金はとても大切だ。 しかし、 ある程度成熟した社会においても、 貧富の格差は存在する。 食べるのに困らない状況で 「お金持ちになりたい」と考える時、 大切なことは、 生きる目的そのものが 「お金持ちになること」 にならないことだ。 経済社会に生きるうえで、 お金がないのは困るが、 だからといってお金があればあるほど、 幸福度が上がるわけではない。 まずは「生きがい」があり、 それを実現するために富を築く。 その順番を誤ると、 富があっても、 生きる目的を見失ってしまうことに なりかねない。 アリストテレスは、 人が生きるうえでの目的因は 「幸福」であり、 その達成に優れた人間性である 「徳」が不可欠と考えた。 そして、徳を得るためには、 適度なバランス感覚を保ち、 「中」を目指すことが肝要と説いた。 ここで言う「徳」とは、 「倫理的卓越性」、 つまり倫理的な徳。 徳を得るためには、 知識や教養だけではなく、 「過剰」や「不足」に偏ることなく、 「中庸」をとる習慣を 身につけるべきとした。