フロイトが行ってきたのは、 心のメカニズムを明らかにする ことだったといっていい。 実は心は三層構造になっている。 まず人間の根底には、 性的エネルギーとしてのリビドーがある。 これをドイツ語で「エス」という。 ラテン語で「イド」ともいう。 ともに「それ」という意味。 無意識の心的エネルギーを指している。 これに対して、 父親の存在に象徴されるような、 ある種の規範意識が対立する。 これを「超自我」という。 たとえば、 男の子が母親への愛に挫折し、 父親に対して抱く エディプス・コンプレックス[1]が 大きく影響を及ぼしている。 そしてこの両者の対立を調停するのが 自我である。 このエス、自我、超自我の3つが 心の三層構造である。 欲望としてのエスと規範意識としての 超自我は対立することになる。 自我はこの両者を調停する役目を担う。 両者のはざまで対立をうまく コントロールしたり、 阻止したりする機能を 働かせることによって、 自我は発達していく。 もっとも、自我は万能ではない。 エスと超自我の間で常に葛藤しなければ ならないので、心が爆発しそうになる こともある。 そんな場合、 心には防衛機制という機能が働いて、 自動的にガス抜きするようにできている。 欲しいものが手に入らなくても、 代わりのもので我慢しておくというように。 心は精密な機械のように、 うまく作られている。 ※[1] フロイトが提示した概念。 男子が母親に性愛感情をいだき、 父親に嫉妬する無意識の葛藤感情。