◆現実の厳しさは、幼いうちから伝えていく だれもが仲良くハッピーエンドのほうが、 子どもの心に平穏をもたらすのかもしれないが、 現実の厳しさを知らせるのも 必要ではないだろうか。 もし、この世の中の人間が 善男善女だけの集まりなら、 童話もハッピーエンドだけでいい。 だれもが強く正しい正義の味方になれるのならば、 刻苦勤励、ひたすら正直に努力すればいい。 ところが現実には、 ほとんどの子どもは普通の大人になっていく。 いや、普通の大人にしかなれないものだ。 弱肉強食の世の中、 働かざる者食うべからずの厳しさを、 子ども心に植えつけておくべきではないだろうか。 フランスのように。 ◆人生の鉄則は働かざる者食うべからず アリとキリギリスが、 仲良くテーブルを囲んでいる光景は ほほえましく魅力的だが、 キリギリスがいくら反省したところで、 アリのように夏の暑さをものともせず、 せっせと働くようになるはずがない。 イソップ童話にある「アリとセミ」の本当の狙いは、 人生の鉄則=働かざる者食うべからずである。 そしてフランスの子どもたちの誰もが読んでいる ラ・フォンテーヌの寓話「アリとセミ」でもやはり、 趣旨は原作のまま。 アリのおばさんとキリギリスのおじさんが 仲良くしている光景が描かれている ハッピーエンドな児童書がある国は、 世界広しといえども、この日本だけなのである。