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第1感「最初の2秒」の「なんとなく」が正しい【マルコム・グラッドウェル】



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◆閃きと熟慮、勝つのはどっち?

私たちはどんな場合に「第1感」を信じ、
どんな場合に熟慮を重ねればいいのか?

選択肢が少ない場合は、
よく考えたほうがいい。

しかし選択肢が多くて困るときは、
意識下の判断に頼るのがベストかもしれない。

もちろん、これは常識に反する。

常識的には、
単純な選択は直感にまかせればいいと考える。

しかし、実際は真逆なのだ。

つまり、私たちの無意識を司る
大脳の領域は巨大なコンピュータで、
変数(選択肢)が多ければ多いほど
正しい答えを導く。

たいして重要でないことを決めるときは、
いろんな選択肢を熟慮するのがよい。

だが真に重要な問題、
たとえば伴侶や職業を選ぶと
いった場合には無意識、
つまり私たちの内なる声に従って決めるのがいい。

人生における重大な決断に際しては、
私たちの本性の奥深くに潜む
ニーズに(判断を)委ねるべきだ。

◆情報が少ないからこそ
正しい判断ができる。

現代は情報があふれている時代。

いつでも、ちょこっと指を動かすだけで
ほぼ無尽蔵の情報が手に入る。

知識不足はいけない、
よく調べてから行動しろと
毎日のように説教されている。

しかし、問題は情報過多に対する
人々の強烈なうんざり感だ。

知りすぎたり、
情報の山に埋もれたりすると、
思いがけない痛い目に遭う。

たぶん私たちは、
情報とその理解を取り違えている。

◆本能的な意思決定の本質を理解するには、
まともな判断力の失われる状況に
追い込まれた人たちを許す気持ちが必要である。

◆私たちは瞬時の判断を鵜呑みにしすぎる。

私たちは、
無意識の中から湧き上がってくるものは
制御できないように思う。

だが実は制御できる。

瞬時の認知が生じる環境を制御できるなら、
瞬時の認知も制御できる。

戦場で戦ったり、
救急室に人を配置したり、
警官が町をパトロールするときのミスを
防げるはずだ。

◆人が正しく判断ためには
大切な教訓が2つある。

まず、正しく判断するには
熟慮と直感的な思考のバランスが必要だ。

2つ目は、
優れた判断には情報の節約が欠かせない。

◆情報が増えるほど、
判断の正確さに対する自信は
実際と比べて不釣り合いなほど高くなる。

◆この前レストランに行ったとき
料理を運んでくれたウェイターか
ウェイトレスの顔を思い浮かべてみてほしい。

警察の面通してその人を当ててほしいと言われたら、
できるだろうか?

たぶんできるだろう。

人の顔を思い出すという行為は
無意識の認知のわかりやすい例だ。

考える必要はない。

顔がすっと浮かぶ。

だが紙とペンを持って、
その人の見た目の特徴を
できるだけ詳しく書き留めてほしいと
言われたらどうだろう。

顔立ちはどうだったか?

髪の色は?

どんな服を着ていたか?

その後面通しをすると、
不思議なことに今度は
その人の顔をちゃんと言い当てられない。

何もしなければ問題なかったはずの顔を
見分けるという能力が、
顔の特徴を説明すると弱まる。

これを「言語による書き換え」と呼ぶ。

脳には言葉で考える左脳と
視覚で考える右脳がある。

顔を言葉で説明すると、
視覚的な記憶が言葉に置き換わり、
思考が右脳から左脳に追いやられてしまう。

だから2度目の面通しでは、
どんなふうに「見えた」かではなく、
どんなふうに見えると「言った」かの記憶を引き出す。

ここが問題だ。

私たちは人の顔に関する限り、
言葉で説明するよりも
視覚的に認識するほうがずっと得意だ。

◆バン・ライパーは、
看護師、集中治療室を担当する医者、
消防士といった、
重圧の中で判断を下さなければならない
人々について研究した。

その結論のひとつが、
専門家は判断を下すとき、
あらゆる代案を論理的かつ体系的に
比べているわけではないというものだった。

判断はそんなふうに下すものだと教えられるが、
実際にはそれでは時間がかかりすぎる。

看護師や消防士は経験と直感、
そして頭の中で大ざっぱな
シミュレーションをもとに、
瞬時に状況を見極めて行動していた。

◆第一印象は経験と環境から生まれる。

つまり、第一印象を構成する経験を変えれば、
第一印象を生む輪切りの方法を変えられるのだ。

◆トップセールスマン成功の秘訣

セールスで成功するには
輪切りの能力がおおいに求められる。

不安そうな客もいれば緊張ぎみの客もいる。

欲しい車が決まっている客もいれば、
まったくあてのない客もいる。

販売員として成功したければ、
こういう情報を全部集め、
夫婦や父・娘でやってきた客の関係を見極め、
適切に行動する必要がある。

しかも、客に会ってから短時間で
すべて情報を処理しなければならない。

ボブ・ゴロムは
どのように振る舞うときでも、
簡単なルールに従う。

すなわち「一にも二にも、お客様を大切に」だ。

だが、成功にはこれ以外にもっと重要な事がある。

客の求めているものや心理状態について
いくつも瞬時に判断を下すけれども、
客を見た目で判断することは絶対にしない。

店を訪ねてくる客は
みな同じように車を買ってくれる
可能性があるとみなす。

ゴロムは「手堅い客」を見つけようとはしない。

どの客にも同じ価格を示す。

一台でたくさん稼ぐよりも、数を売って稼ぐ。

そして、
公平な販売員という評判が広まり、
彼の取引きの3分の1は
満足した客が紹介してくれた客で成り立っている。