◆保険は損することに意味のある宝くじ【1】 生命保険というのは、 身も蓋もない言い方をするならば、 宝くじの一種である。 保険料は宝くじ代金の分割払いであり、 自分が死ぬと保険金という名の当せん金が支払われる。 さらに、一般の宝くじと同様に、 生命保険の場合もほとんどの人は損をする。 おまけに経費率が高いので、 ギャンブルとしては救いがたいほど魅力がない。 だが、抽選に外れたということは 自分がまだ生きているということだから、 文句を言う客はいない。 もっとも、こんな味気ない説明では 保険に加入する人はいなくなってしまう。 そこで、「愛情」という甘味料が必要になるのだ。 生命保険を売る人たちは、 今でも「ご家族への愛情を示すために、 大きな保険に入りましょう」と甘く囁く。 ◆保険は損することに意味のある宝くじ【2】 宝くじの当せん者は自分の意思とは無関係に選ばれる。 参加者が自由に当たりを引けるなら その宝くじはすぐに破綻してしまう。 保険も宝くじと同様、 加入者が保険金を受け取るかどうかは 運命の女神が決める。 誰も自分の死や不幸を予め知ることはできない。 保険料(宝くじ代金)よりも 保険金(当せん金)の方がはるかに大きい以上、 大半の人は損をすることになる。 保険加入者の多くが、 保険金を受け取れないまま契約を終了する。 これはその期間を無事に過ごせたということだから、 保険とは損をすることに意味のある宝くじなのだ。 ところで、保険と宝くじでは一つだけ 大きな違いがある。 宝くじは一括払いしかできないが、 保険料は分割払いが可能なのだ。 保険は「少ない保険料で大きな保障が得られる」 優れた金融商品である。 その一方で、 満期までに支払う保険料の総額は割高になるから、 そのメリットを有効に利用できる人は限られている。 あなたが独身なら、生命保険は不要である。 子供がいないか、 すでに成人しているなら、 保険料の支払いより資産形成を優先すべきだろう。 一方、子供がまだ幼く十分な貯蓄がない家庭は、 保険の優位性を最大限に活かせる。 わずかな保険料で 家族の生活を守ることができるからだ。 これが誰でも知っている保険活用の原則だ。 損をすることに意味のある宝くじは、 人生の必要な時期に、 必要最低限の保険料で加入するのが賢い使い方である。 不要になった保険料は、 将来のための投資に充てればいい。 ところで日本の公営宝くじは、 利益の約半分を宝くじ協会が持っていく 恐ろしく割の悪いギャンブルだ。 同様に日本の定期保険も保険料の50%ちかくは 経費に消えていくという。 日本人は宝くじと保険が大好きだ。 そして喜んで損をしている。 やはりこのふたつはよく似ている。