Liberal Arts {Article436}

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教養を磨く [2] 【田坂広志】



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◆人口知能革命による「学歴社会」の崩壊

いま、世の中では、様々な変化が急激に起こり、
その結果、短期間に、一つの産業や市場、業界や事業、
職種や仕事が消滅することなど
日常茶飯事になっているが、
その変化の中で淘汰されてしまうのは、
常に、根拠の無い楽観論に浸り、
その変化を脅威と思わず、
危機感を持たない企業や人材である。

「知識の記録力」と「論理的思考力」だけで
行える仕事を担う「知的職業」は、
その大半が、人工知能におって置き換わっていく。

専門的知識と論理的思考による判断では、
人工知能は人間に比べ、
圧倒的に優れた力を発揮するからだ。

そして、知的職業の危機は、そのまま、
現在の「学歴社会」の崩壊を意味している。

では、東大卒の学歴でも淘汰される時代に、
我々は、いかなる能力を身につけ、磨いていくべきか。

それは、「学歴的能力」よりも高度な
「3つの能力」を身につけることである。

1: 職業的能力
2: 対人的能力
3: 組織的能力

しかし、この「3つの能力」の根本にある力は、
やはり「人間力」と呼ばれるもの。

そして、人工知能革命が到来する遥か以前から、
実社会で活躍する優れた人物は、
誰もがこの力を身につけていた。

不思議なことに、この最先端の革命がもたらすものは、
懐かしい価値への原点回帰に他ならない。

◆我々は、希望を抱いて未来を見つめるとき、
人生に対して肯定的であればあるほど、
「未来は定まっていない。運命など存在しない。
自らの力で未来を切り拓く」という思いを抱く。

しかし、一方、我々は、
すでに起こってしまった過去の出来事を、
悔いを抱いて見つめるとき、
それが受け入れがたい痛苦なものであればあるほど、
「あの出来事は、
自分の人生に与えられた運命であっ たのか・・・」
との思いを抱く。

それは、人類の歴史の中で、
古今東西の多くの物語や文学において語られてきた
「運命を受け容れる」
という人間の心の姿に他ならない。

では、この「運命を受け容れる」
という言葉の真の意味は、何か。

いかに逆境に満ちた人生が与えられようとも、
いかに苦労の多い人生が与えられようとも、
それでも、それは、ただ一度かぎりの、
かけがえの無い、自分の人生。

そう思い定め、その人生を慈しみ、
与えられた逆境と苦労を魂の成長の糧として歩むとき、
「運命」という言葉は、いつか、
「天命」という言葉に変わっていくのであろう。

◆地球は「奇跡の惑星」

この地球は、太陽から遠すぎず、
近すぎず、最適の距離にあったため、
生命が生まれる稀有の環境が与えられた。

それゆえ、46億年前に誕生した地球は、
最初の10億年の間に、原始の生命を生み出し、
それが、さらに数十億年の歳月をかけ、
生命進化の旅路を辿った。

原初的な生命から、魚類や両生類へ、
爬虫類や鳥類へ、哺乳類や霊長類へ、
そして、高度な精神を持った人類へ。

我々は、その138億年の旅路の果てに、
いま、ここにいる。