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得する生活―お金持ちになる人の考え方[3] 【橘 玲】



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◆マルチ商法に被害者はいない

たとえば、次のような儲け話があったとする。

あなたは、話くらい聞いてみようと思うだろうか?

もしもそうなら、気をつけた方がいい。

(1) 150万円出資して健康食品の販売代理店になれば、
毎月12万円、1年で約150万円の配当がもらえる。
実際の販売は親会社に委託するので、
あなたは何もしなくていい。

(2)商品カタログの中から売れそうなものを選んで、
広告費として1口5万円以上投資すれば、
売れ行きに応じて、
半年で最低20%の配当金が支払われる。
あなたは広告費を出すだけなので、
何もしなくてもいい。

(1)の儲け話で、
詐欺会社は約48,000人から1,500億円を集めた。

(2)の儲け話で、
詐欺会社は約12,000人から480億円を集めた。

ここでのポイントは、
「あなたは何もしなくてもいい」ということだ。

世の中には、「働かずに金を儲けたい」
「仕事などせず楽して暮らしたい」
という人間がいっぱいいる。

マスコミは必ず、
「被害者は高齢者や女性」と書くが、
実際には働けない人は少数で、
大半は「働かない」小金持ちだということは、
知ってはいるが伏せている。

この事実が表に出ると、
「マルチ商法=悪」、「被害者=善」
という勧善懲悪の図式が崩れて、
一般大衆にアピールする報道ができなくなるからだ。

この世でもっとも貴重な名簿のひとつは、
間違いなく、「働きたくない小金持ち」の名簿である。

これさえあれば、
誰でもマルチ商法で100億円単位の金を
集めることができる。

仕組みは簡単で、最初の人間に約束した配当を、
次の人間から集めた金で払えばいいだけだ。

なんの才覚も必要ないから誰でもできる。

働きたくない小金持ちは、
資産運用だけで
生活していかなくてはならないので「強欲」である。

最初は恐る恐る150万円出したとしても、
実際に約束された配当12万円が振り込まれると
すぐに欲を出し、
「1500万円出せば、
何もしなくても毎月120万円の儲けが出る。
これなら、働かなくても楽しく暮らせるじゃないか」
と考える。

こうして、有り金すべてを巻き上げられることになる。

これは「ポンジスキーム」と呼ばれている。

マルチ商法を仕掛ける人間は、
世の中にこんな人間がいっぱいいることを知っている。

さらに、自分がやらなくても、
いずれ誰かに騙される、
有り金すべてを巻き上げられることを知っている。

そこで、彼らは考える。

「だったら、
俺が身ぐるみ剥いだっていいじゃないか」

これが、マルチ商法の被害者と加害者の関係である。

世の中の仕組みは、
新聞やテレビのニュースより、
ちょっと複雑なのだ。