◆マルチ商法に被害者はいない たとえば、次のような儲け話があったとする。 あなたは、話くらい聞いてみようと思うだろうか? もしもそうなら、気をつけた方がいい。 (1) 150万円出資して健康食品の販売代理店になれば、 毎月12万円、1年で約150万円の配当がもらえる。 実際の販売は親会社に委託するので、 あなたは何もしなくていい。 (2)商品カタログの中から売れそうなものを選んで、 広告費として1口5万円以上投資すれば、 売れ行きに応じて、 半年で最低20%の配当金が支払われる。 あなたは広告費を出すだけなので、 何もしなくてもいい。 (1)の儲け話で、 詐欺会社は約48,000人から1,500億円を集めた。 (2)の儲け話で、 詐欺会社は約12,000人から480億円を集めた。 ここでのポイントは、 「あなたは何もしなくてもいい」ということだ。 世の中には、「働かずに金を儲けたい」 「仕事などせず楽して暮らしたい」 という人間がいっぱいいる。 マスコミは必ず、 「被害者は高齢者や女性」と書くが、 実際には働けない人は少数で、 大半は「働かない」小金持ちだということは、 知ってはいるが伏せている。 この事実が表に出ると、 「マルチ商法=悪」、「被害者=善」 という勧善懲悪の図式が崩れて、 一般大衆にアピールする報道ができなくなるからだ。 この世でもっとも貴重な名簿のひとつは、 間違いなく、「働きたくない小金持ち」の名簿である。 これさえあれば、 誰でもマルチ商法で100億円単位の金を 集めることができる。 仕組みは簡単で、最初の人間に約束した配当を、 次の人間から集めた金で払えばいいだけだ。 なんの才覚も必要ないから誰でもできる。 働きたくない小金持ちは、 資産運用だけで 生活していかなくてはならないので「強欲」である。 最初は恐る恐る150万円出したとしても、 実際に約束された配当12万円が振り込まれると すぐに欲を出し、 「1500万円出せば、 何もしなくても毎月120万円の儲けが出る。 これなら、働かなくても楽しく暮らせるじゃないか」 と考える。 こうして、有り金すべてを巻き上げられることになる。 これは「ポンジスキーム」と呼ばれている。 マルチ商法を仕掛ける人間は、 世の中にこんな人間がいっぱいいることを知っている。 さらに、自分がやらなくても、 いずれ誰かに騙される、 有り金すべてを巻き上げられることを知っている。 そこで、彼らは考える。 「だったら、 俺が身ぐるみ剥いだっていいじゃないか」 これが、マルチ商法の被害者と加害者の関係である。 世の中の仕組みは、 新聞やテレビのニュースより、 ちょっと複雑なのだ。