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得する生活―お金持ちになる人の考え方[6] 【橘 玲】



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◆正義を語る人々

金貸しに不利な制度を導入することが
債務者保護であり、
社会正義の実現だとする奇妙な宗教が
跋扈ばっこしている。

この宗教の信者たちは、
金融機関はリスクの如何にかかわらず、
これまでと同じ貸出を続けるはずだと
素朴に信じている。

上限金利を引き下げ、
金利を利息制限法で引き直し、
その結果金融機関が融資を回収しはじめると、
「貸ししぶり」、「貸しはがし」と批判する。

彼らはまた、連帯保証人制度を廃止し、
担保割れの損失を金融機関が
負担することを声高に要求する。

なかには、
借りた金を返さないのが正義だと主張する者もいる。

彼らは善意の人である。

その善意が金融機関の融資を縮小させ、
闇金融業者をのさばらせ、
被害者を地獄の底に叩き込んでいる。

まさに、地獄への道は善意で敷きつめられている。

ちなみに、イギリスでは闇金融業者を
少なくするために金利の「上限」が廃止された。

◆日本では、
債権債務関係は「債権法」によって規定されている。

一方、イギリス、フランス、ドイツなど
欧米諸国ではこれを「債務法」で規定している。

債権と債務は一対一で対応するが、
必ずしも対立関係にあるとは限らない。

ほとんどの国はこれを債務本位で規定しているが、
日本だけがなぜか債権本位の民法を持っている。

債権本位の場合は、債務者である連帯保証人は、
自分の債務がいくらになるかは、
債権者の請求額によって変動する。

日本では、連帯保証人は、
債権者から債務額の通知を受ける権利があるが、
実際には債権者が通知しないことが多い。

そのため、日本では、連帯保証人にとって、
自分の債務額がいくらなのかを知ることは難しい。

日本ではこんな理不尽なことが起こる。

◆ノンリコースローンの誤解

不動産価格の上昇局面では、
割安な金利で不動産投資ができる
リコースローンが有利である。

でも、地価が下落すると、
保険の付いたノンリコースローンが羨ましく見える。

もっとも日本にはノンリコースローンの
住宅ローンは存在せず、
利用者には選択肢がない。

金融機関がノンリコースローンを売り出せば、
地価下落のリスクを抑えてマイホームを
購入することが可能になる。

利用者の選択肢を増やす意味では、
ノンリコースローンの普及は有意義だ。

ただし、ノンリコースローンは
金利が高くなるので必ずしも優位とはならない。

もっとも自己破産してしまえば、
どんな種類のローンであれ
それ以上の返済を迫られることはない。

その意味では、
日本の住宅ローンはすでに
実質ノンリコースローン化しているとも言える。