◆正義を語る人々 金貸しに不利な制度を導入することが 債務者保護であり、 社会正義の実現だとする奇妙な宗教が 跋扈ばっこしている。 この宗教の信者たちは、 金融機関はリスクの如何にかかわらず、 これまでと同じ貸出を続けるはずだと 素朴に信じている。 上限金利を引き下げ、 金利を利息制限法で引き直し、 その結果金融機関が融資を回収しはじめると、 「貸ししぶり」、「貸しはがし」と批判する。 彼らはまた、連帯保証人制度を廃止し、 担保割れの損失を金融機関が 負担することを声高に要求する。 なかには、 借りた金を返さないのが正義だと主張する者もいる。 彼らは善意の人である。 その善意が金融機関の融資を縮小させ、 闇金融業者をのさばらせ、 被害者を地獄の底に叩き込んでいる。 まさに、地獄への道は善意で敷きつめられている。 ちなみに、イギリスでは闇金融業者を 少なくするために金利の「上限」が廃止された。 ◆日本では、 債権債務関係は「債権法」によって規定されている。 一方、イギリス、フランス、ドイツなど 欧米諸国ではこれを「債務法」で規定している。 債権と債務は一対一で対応するが、 必ずしも対立関係にあるとは限らない。 ほとんどの国はこれを債務本位で規定しているが、 日本だけがなぜか債権本位の民法を持っている。 債権本位の場合は、債務者である連帯保証人は、 自分の債務がいくらになるかは、 債権者の請求額によって変動する。 日本では、連帯保証人は、 債権者から債務額の通知を受ける権利があるが、 実際には債権者が通知しないことが多い。 そのため、日本では、連帯保証人にとって、 自分の債務額がいくらなのかを知ることは難しい。 日本ではこんな理不尽なことが起こる。 ◆ノンリコースローンの誤解 不動産価格の上昇局面では、 割安な金利で不動産投資ができる リコースローンが有利である。 でも、地価が下落すると、 保険の付いたノンリコースローンが羨ましく見える。 もっとも日本にはノンリコースローンの 住宅ローンは存在せず、 利用者には選択肢がない。 金融機関がノンリコースローンを売り出せば、 地価下落のリスクを抑えてマイホームを 購入することが可能になる。 利用者の選択肢を増やす意味では、 ノンリコースローンの普及は有意義だ。 ただし、ノンリコースローンは 金利が高くなるので必ずしも優位とはならない。 もっとも自己破産してしまえば、 どんな種類のローンであれ それ以上の返済を迫られることはない。 その意味では、 日本の住宅ローンはすでに 実質ノンリコースローン化しているとも言える。