Liberal Arts {Article508}

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山岡鉄舟 修養訓 [8] 【平井正修】



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◆やるべきことに徹する

坐るときは坐るに徹する、
行くときは行く。

黙っているか喋っているか、
動いているか止まっているか、
その一つとして大事でないものはない。

心刀の切れ味もまた煩脳ぼんのうに
とりつかれると鈍くなってしまうものだ。

◆守りをしっかり固める

自分を守ることを忘れて
相手を討つことばかりを考えて勇んでいるときには、
得てして大敗をきするものである。

人間には敵対する相手を
やっつけたいという気持ちがある。

「攻撃は最大の防御なり」
という言葉もあるが、
自分のことはよく見えなくても
相手はよく見えるから、
どうしても相手をなんとかしようと考える。

しかし、我が身をきちんと調えておかないと、
結局、隙を突かれて負けてしまうことになる。

事業だってそうだろう。

中核となる事業が確立されていないのに、
あれこれ手を出してもうまくいくはずがない。

◆清く静かな心を養う

「敵をただ打とう思うな身を守れ、
をのづからもるしずの月」

相手を打つことばかり考えずに、
きちんと自分の心を調えることを
忘れてはいけない。

明鏡止水めいきょうしすいの心境に至れば、
自然と相手の弱点は見えてくるものだ。

打とう打とうと思うと隙が出るというのは、
儲けよう儲けようと思っていると
儲からないのと似ているかもしれない。

鉄舟先生は禅の上で悟りを開いたときに
「無敵の境地に達した」と言っているが、
そのきっかけをつくったのは
平沼専蔵ひらぬま せんぞうという弟子の実業家だった。

この人は平沼銀行という
銀行をつくったほどの実業家だが、
鉄舟先生のところへ来て、
相場が上がったり下がったりするのを
気にしていると商売にならない、
これと心を決めていくことが必要だ
という話をしている。

その話からふっと思うところがあって、
このような歌を詠んだようだ。

清く静かな心でいれば、
相手の隙が心の鏡に映る。

そこを打てば自から勝ちにつながるということだ。