◆松陰からの学び(その1) 無駄をそぎ落とす。 集団社会で生きて行くことは楽じゃない。 周りに能力を認められるまで、 居場所を手に入れるのに必死だ。 ひとたび自分の居場所を手に入れれば、 今度はさらに居心地をよくするために、 ひとつ上の暮らし、地位、家族、実績・・・ などを手に入れようと必死になる。 そうするうちに、 いつしか人は「居場所を守るために」 生きるようになる。 そのためだったら、 たいていのことはできるようになり、 生き方や信念ですら曲げられるようになる。 安心感を求めるのは生存本能だ。 だが、松陰はそういう生き方を嫌った。 「安定した生活」の先には、 目に見えぬ物に怯える、 つまらない日々しか待っていないと 知っていたからだ。 松陰が理想としたのは武士の生き方だった。 士農工商という制度に守られていた武士は、 何も生み出さずとも、禄(給料)があったが、 その代わり、四六時中「生きている手本」 であり続けなければいけなかった。 武士の日常から無駄なものを削り、 精神を研ぎ澄ました。 俗に通じる欲を捨て、 生活は規則正しく、 できるだけ簡素にした。 万人に対して公平な心を持ち、 敵にすら憐れみをかけた。 自分の美学のために、 自分の身を惜しみなく削った。 目の前にある安心よりも、 正しいと思う困難を取った。 そのように逆境や不安に動じることなく、 自分が信じていた生き方を通すことこそが、 心からの満足を得られる生き方だと 松陰は固く信じていた。 本当に大切にしたいことは何か。 大切にしたい事のために、 今できることは何か。 その問いの繰り返しが、 退屈な人生を鮮やかに彩いろどる。