◆新型のコンピュータに、 10の重いプログラムを並行処理させることを 想像してみよう。 動きはだんだん遅くなり、 エラーが発生し、ついにはフリーズしてしまう。 貧しい人々の状況もそれに似ている。 彼らが愚かな判断をするのは、 愚かだからではない。 愚かな判断に追い込まれる 環境で暮らしているからだ。 ◆「欠乏の心理」がもたらす悪影響は、 そのメリットをしのぐ。 欠乏(お金など)はあなたの気持ちを、 差し迫った不足に集中させる。 5分後に始まる打ち合わせ、 翌日に迫った支払いなど。 そこでは、長期的な視野は完全に失われる。 ◆生活保護では、 受給資格審査、申請、認可、返還といった煩雑な 手続きの案内人として、 社会福祉課の人員が大勢必要になる。 社会保障制度は、 人々の安心感と誇りを促進すべきものだが、 疑念と屈辱のシステムに成り下がっている。 全ての人に公平に給付するという ベーシックインカムのシステムは、 よりよい妥協策となるだろう。 ◆世界各地で行われた研究により、 確かたる証拠が示されている。 フリーマネー(自由になるお金)は機能する。 すでに研究によって、 フリーマネーの支給が犯罪、小児死亡率、 栄養失調、10代の妊娠、 無断欠勤の減少につながり、 学校の成績の向上、経済成長、男女平等の 改善をもたらすことがわかっている。 ◆オランダは、労働とインターネットの分野で フロンティアを切り開いてきた。 労働の分野では、 1982年のワッセナー合意から始まる 労働環境の先進化が有名だ。 失業対策としてのワークシェアリング から始まったこの改革は、 1996年には正規雇用者と非正規雇用者の 賃金についての同一労働同一賃金を定めた。 その結果、失業者は、1983年の14%から、 2001年の2.4%まで縮小した。 労働分配率が効率的になった結果、 企業収益も改善、国際競争力もつき、 投資が促進された。 このオランダの成功は、 1日3時間労働で残りの時間を 人生にとって本当に有意義なものに使うと いったことも可能にする。